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レポートの書き方(1)はじめに

 「レポート・論文の書き方」について、とても多くの大学教員がHPやブログに情報をアップしています。その内容は実に様々で、学生も困惑してしまうのではないかと思うほどです。理系と文系でも違いはありますし、文系でも人文科学系と社会科学系では違います。さらに、同じ人文科学系でも、文学研究、歴史研究、哲学研究など、研究の領域ごとで違いは存在しています。もちろん、文系の論文・レポートを書く際の注意点を最大公約数として示すことはできるでしょう。そのような最大公約数が示された本として、私は学生に小笠原喜康『新版 大学生のためのレポート・論文術』(講談社現代新書)を薦めています。できるだけ個人の「癖」を排している点に好感が持てます。本書は最大公約数としての情報を最大限に盛り込んでいるため、辞書的に使うのに便利です。ですが、(1)それはそれとして、レポート作成の手順をもう少し簡略に示した手引きがあってもよいのではないか、(2)最大公約数の情報だけでなく、私の「癖」に合わせてもらうにはどうすればいいかを学生には伝えるべきではないか、といった理由から、本サイトに「レポート・論文の書き方」を掲載することとしました。ですので、細かな執筆ポイントは上述の本をご覧頂くとして、本サイトではレポート執筆の大まかな流れをつかんでもらえればと思います。

レポートの書き方(2)テーマ設定

 

 本サイトで言う「レポート」とは、授業の課題としてのレポートです。個人的に勉強したことをまとめた「レポート」であってもよいですが、課題のテーマが与えられたところを出発点としたいと思います。

 当然ですが、課題のテーマは授業の内容と関連しています。授業内容とまったく関係のないテーマが課せられることがあるかもしれませんが、少なくとも私はそのようなことはしません。ですので、授業で聞いた話の内容を思い出すことから始めて下さい。ただし、授業で聞いた内容をそのまままとめ直してもレポートにはなりません。授業で聞いた話を踏まえながら、そこから一歩ジャンプしたような(ただし、何歩もジャンプして授業とは関係の無い話になってしまうことは避ける)テーマ設定(こちらは論述のテーマ)が望ましいです。

 その際、重視すべきは、自分が関心を持ったことを論述のテーマに据える、ということです。興味の持てなかったことについて、調べたり、考えたりすることは苦痛です。けれども、興味を持てたことであれば、授業の内容を踏まえつつ、さらに詳しいことを知りたいと思うはずです。

 設定する論述テーマは、できるだけ絞り込むようにして下さい。「宗教について」とか「仏教について」などといった、漠然としたテーマを設定しないように。ひとつの文章の中に、あれもこれもといくつもの話題を詰め込んでしまうのも避けて下さい。できるだけ絞り込んだテーマの下に、一貫した文章を構成することを目指して下さい。​

レポートの書き方(3)調べたこと・考えたこと

 

 レポートには何を書けばよいのでしょうか?簡単に言えば、「調べたこと」と「考えたこと」を書けばよいのです。論述のテーマが決まったら、そのテーマに関する参考文献を読みます。そして、そして、自分が考えたことを論じます。これが基本です。とは言え、学生のみなさんが苦労するのは「考えたこと」を書く、ということです。本を読んで調べたことは、けっこう書けるのですが、さてそれで何を考えればよいのだろう、となってしまう。そして、「調べてみると、いろいろなことがわかって、勉強になりました」といった感想で終わり。これまでこういったレポートをたくさん読んできました。

 「考え」を論じるためには、「問い」が必要になります。この「問い」が見つかれば、「考え」を論じることができます。よいレポート・論文とは、すばらしい結論が示されたレポート・論文ではありません(そんなすばらしい結論など、簡単に書けるものではありません)。そうではなく、考察に値する「問い」を見つけることができていれば、そのレポート・論文は十分評価に値します。

 以下、「考え」を論じる例を示してみます。論争的なトピックを取り上げた場合です。

(例)

 例えば、興味を持った事柄について調べてみたら、Aという意見とBという意見があることがわかった。両者の見解を比較してみて、

(1)私はAの説が妥当と考えた、なぜかと言うと……

(2)AもBも論じていない問題があることに気づいた、その問題とは……

(3)Aの考えの○○という部分には首肯できるが、××に関してはBの考えが説得的であり、その結果として、次のようなことが言えると考えた。すなわち……

 以上、論争的なトピックを取り上げた場合の考察例をいくつか示してみましたが、他にもいろいろなパターンがあり得ます。 

 いずれにしても、ただ調べたことをまとめただけの文章ではなく、書き手なりの主張がある文章にして欲しい、ということです。

 

レポートの書き方(4)インターネットの利用について

 

 インターネット上で情報を収集することも、もちろん重要な作業となります。レポート執筆のためのネット情報としては、一次情報と二次情報があります。

 一次情報とは、さまざまな教団が発信しているサイトや個人的な宗教体験を綴ったブログ等が含まれます。こうした情報に関しては、「xxというサイトには次のように書かれている」などの但し書きを付した上で、その内容を記載してもかまわないのですが、それらがあくまで研究「対象」であることを忘れないで下さい。

 二次情報とは、研究者の書いた論文やそれに準ずる文章を指すと考えて下さい。こうした情報は自説を補強したり、あるいは批判の対象としたりするために利用可能です。ただし、ネット上には、そのような体裁で書かれていながら、内容に問題がある文章も多数存在しています。例えば、ウィキペディアの記載も、すべてがデタラメというわけではありませんが、不正確な既述が含まれる場合も多いですから、その内容をそのまま引用することはお勧めしません。

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